恋口の切りかた



──はァ!?

なんだそりゃ。


俺は拍子抜けした。
心配して損(そん)してしまった。


く……くだらねぇ……。


親父殿も俺と同じ感想らしく、
どうもさわいでいるのは母上一人のようだ。

「まあまあ、別に良かろう。嫌なら着物など別に男物で」

「笑いごとではありません!」

笑ってばかりで取り合わない親父殿に、
母上がかみつくように言う。


……いや、こんなの笑いごとだと思うけどな。


「ふむ、なんならこのまま男として育てるか」

「晴蔵殿ッ!!」

おもしろがっているとしか思えない親父殿の言葉を聞いて、
ついに目尻をつり上げてさけぶ母上様。

元々が殿様の家の出だからか、
母上は時折気の強いところを見せる。


「晴蔵殿」と親父様を名前で呼ぶのは、
かなり本気で怒っている時だ。