【漣】 その日は夕暮れ前から雨が降り出し、 許嫁の相手が面倒で家から逃亡していた俺は まだ肌寒いこの季節に 天罰でも下ったのかというくらい 全身ずぶぬれになって帰るハメになった。 俺が屋敷に着くと、何やらちょっとした騒動になっていた。 初めは俺のことかとも思ったのだが──どうもそうではないらしい。 留玖が大変なのだと、母上がおろおろしている。 「留玖がどうしたんだ!?」 俺が驚いてたずねると、 「女物の着物を着るのを嫌がっているのです」 そんな答えが返ってきた。