恋口の切りかた

俺は衝撃を受けて、鬼之介を見つめた。

「だが──彼女に負けたくないとか勝ちたいという思いがまだあるなら、貴様はまだ、並べる可能性があるということだ」

言っただろう、と鬼之介は俺を見下ろして、

「ボクの目には、貴様は留玖殿と十回勝負をして十回とも負けるような腕には見えん」

真面目な顔でそう口にした。


俺は鬼之介から、粉雪が落ち続ける白い空へと視線を移して、

それから苦笑した。


「ふん、てめえの睡眠不足の目なんざあてにならねえな」

「なにィ!?」


俺はケラケラ笑いながら立ち上がって、


「……だが一応、礼を言っとくぜ」


忘れかけていたことを気づかせてくれた男にそう言った。

いつの間にか俺は、留玖に負けたくないと思っていた子供の頃の思いを失いかけていたんだな……。


まさか鬼之介にこんな指摘をされるとはと、軽く衝撃だったが。


俺の様子を見て、鬼之介は白い息を吐いた。

「ったく世話の焼ける……だいたい、虹庵殿が道場の中の者をわざわざあのような言い方で外に出したのも、貴様やボクや──他の門下生に対抗意識を持たせるためだろうが」

俺は今度こそ目を丸くして、この奇人を見つめた。

「てめえ──ただの阿呆じゃなかったんだな」

「誰がただの阿呆だッ」

鬼之介がわめいて、俺は少しだけ気分が軽くなったのを感じながら、再びケラケラと笑った。