恋口の切りかた

虹庵から何か言葉をかけられていた留玖がこちらに戻ってきて、

「やっぱりお前、凄ェよなァ」

俺が言うと、白い頬がぽっと赤く染まった。

留玖は俺のすぐそばまで歩み寄って、
細い指でためらいがちに少しだけ俺の手に触れて、

「エンのそばにいるために……頑張ったよ」

うつむきながらそう言った。


……可愛い。


くそ、今すぐここで抱きしめたい。


俺は必死に自分を抑えて、「おう」と頷いて、

「あのね、エンが先に試合してくれたから……勝負見てたから、勝てたんだよ。
ありがとう、エン」

留玖はそう言ってキラキラした目で俺を見上げて、照れたようにえへへと笑った。

「あ、鬼之介もありがとう」

「おつるぎ様……ボクはオマケか……」

幸せを噛みしめている俺の横で、鬼之介が何やら打ちひしがれた。


清十郎に、これで縁談はなかったことにするとこの場で言ってやろうかと思いながら、道場の中を見渡して奴を探すと──

何故か清十郎の姿は、留玖の試合を道場の隅で見ていた冬馬のそばにあった。

何事か言葉を交わし合って話している様子だ。


何だ?


俺が少し不思議な気がしていると、

清十郎がこちらを見た。


「せっかくなので少し、勝負ではなく稽古のお相手をしていただきたい」


見物人がぞろぞろと引き上げ始めた道場の中に、清十郎は良く通る声を響かせて、


「冬馬殿にお相手を頼みたいが、いいか」


と、そんなことを言い出した。