恋口の切りかた

「おい」

清十郎が、こちらに戻って来ようとしていた円士郎の背中に声をかけた。

「俺に手傷の一つでも負わせておくべきだったんじゃないのか? 己の身を省みなければ、いくらでも貴様にはできたはずだ」

ふん、と円士郎が鼻を鳴らした。

「俺がそんな卑怯な真似しなくても、正々堂々勝負すればてめえは留玖には勝てねえよ」

彼は断言して、


「それに、怪我はしないとあいつと約束した」


そう言って、私のところに戻ってきた。


私はドキドキとうるさく鳴っている胸を押さえて、

ふう、と汗を拭って息を吐く円士郎に手拭いを渡した。


「悪ィ、勝てなかった。でも、お前なら大丈夫だ」


優しい目で私を見下ろして微笑む円士郎を見上げて、私は彼に抱きつきたくなるのを何とか我慢して、


「無事で、良かったよ……エン」


彼の稽古着をそっと握った。

円士郎の手が、私の頭をポンポンと軽く叩いてくれた。