恋口の切りかた

「エン、気をつけてね……怪我、しないでね」

私は道場の真ん中に進み出ようとする円士郎の稽古着の袖をつかんで、そう言って、

円士郎が驚いたように私を振り返って、

一瞬だけ凄く優しい目で私を見て、

「おう、心配すんな」

すぐに強気な笑みを口元に浮かべた。

「お前は自分の試合のことだけ考えて、あいつの動きをちゃんと見てろ」

円士郎は「いいな」と言って、そっと私の手を振りほどいた。

「……はい」

私は頷いて、


円士郎と清十郎が対峙した。


以前の夜の手合わせで、清十郎が円士郎と同じように二刀流も使うことは知っていたけれど、今日は二人とも互いに一刀を構えている。


大好きな円士郎が、私のために試合をしてくれると思ったら──何だかドキドキして、

どうか、どうか、エンが怪我なんてしませんように、と祈って、


「始め」と、虹庵が勝負の開始を告げた。


清十郎が正眼に構えて、

円士郎は構えをとらなかった。


見物していた人たちがざわめいて──

円士郎は片手に刀をぶら下げたまま、ふらっと歩いて無造作に清十郎と間合いを詰める。


あ。

私はピンと来た。

あれをやるつもりだ。