恋口の切りかた


 【剣】

母上が円士郎と私の仲を咎めないと仰って、私はびっくりした。


農民の出で、御三家の次期当主になる方に思いを寄せてしまったことだけでも許されないのに、

義理とは言え、妹となった身で兄に恋心を寄せるなんてふしだらなこと、絶対に許されるわけがない。


ずっとそう思って、罪悪感に耐えてきたのに……。


私のこんな思いと円士郎との恋仲を知っても、実際に母上は何一つ私を責めることはなさらず、逆に、

「円士郎のどこが良かったのですか?」

「幼い頃よりわがままなところを全て見てきた留玖は、こんな兄を持ってさぞかし迷惑してきたでしょうに」

私をいたわるようなそんな言葉を下さって、

「母上、何だその言い草はァ!」

円士郎が文句を言って、

「本当のことでしょうが」

母上は円士郎を睨みつけたりして、私はちょっとだけ笑って、


円士郎様はとてもお優しい方です、
いつも私を守ってくださったかけがえのない方ですと赤くなりながら伝えると、

「まあ、まあ」と母上はどこか嬉しそうに微笑んだ。


「留玖にそこまで思ってもらえるとは、円士郎殿は果報者ですね」


母上はそんなもったいないお言葉までくださって──


どういうことなのか、私は考えたけれどわからなくて──



もう一年も前──父上が江戸へと発つ前に、円士郎が父上や母上と私のことで約束を交わしてくれていたことなど、私は何も知らなかった。

残された時間がもう、あまりないということも。