恋口の切りかた

「試合を?」

「そうだ。結城家は鏡神流の道場を構え、当主は国の剣術指南役を務める武芸の家だ。
留玖を妻に娶りたいと言うならば武芸の腕を見せてもらうと、そう返答して──留玖と立ち合わせる」

「それって、前に言ってた──私に勝てる腕前の相手じゃないと嫁がせないっていうこと?」

留玖が言って、母上が顔をしかめた。

「それで──万一、留玖が負けたらどうするのです?
海野清十郎殿は、剣術の腕前にも長けた者と聞いていますよ」

「別に」

俺はニヤリとした。

「卑怯かもしれねェがな、返事ではただ『腕前を見せてもらう』とだけ伝えておくんだよ。
これなら別に、勝ったから妻にやるってことにはならねェだろ。

だが、もしも清十郎が留玖に負けた場合は、それを理由にこの縁談は断る。
留玖が負けた場合は──まァ、その時はその時にまた考えるさ」

「そういう悪知恵はよく働くこと」

母上があきれて、

どうだ? と言って、俺は留玖を見た。

「俺も一度だけ奴と剣を合わせたが──俺と互角ってトコだった。
留玖、お前も何度か奴と手合わせしてるんだろ? 勝てそうか?」

「うーん、試合で絶対に勝てるかは……わかんない」

「まあ、そりゃそうか」

俺はもう少し考えて、

「だったら──お前と立ち合わせる前に、鬼之介と俺も奴と試合する。

鬼之介か俺のどちらかが奴に勝った場合も、それで縁談は断るし、
負けたとしても──奴の動きをよく見ておけ。

そうすれば、お前ならきっと勝てる」


うん、わかった、と留玖が頷いて、



斯くして、
それから数週間後の一月の終わりに、

俺たちは結城家の道場で、留玖の嫁入りを賭けた海野清十郎との勝負をすることになったのだった。