恋口の切りかた

「俺は恋仲になった今も、留玖の体は清いままに守ってやってンだ」

これは嘘ではない。

留玖を俺の正妻にするまではと、
俺は未だに最後の一線だけは越えないように我慢し続けているのだ。

褒めてもらいたいくらいである。

「泣いて嫌がる留玖を無理矢理手籠めにしようとしやがったのは、海野清十郎のほうだ!」

俺は「まさかそのような」と笑う母上に、
去年の河原での一件をかいつまんで説明した。

「あの野郎──無理矢理モノにするのをやめたとか言ってやがったが、今度はこういう手に出やがって……!

そんな男のもとに、留玖を嫁にやれるか!」

母上も、俺のこの言葉には蒼白になった。

「留玖をここへ。本人からも話を聞きます」

母上はそう言って、

不安そうな顔のままやってきた留玖の口からも、「嫌なことをされそうになった」と聞いて、かわいそうにと涙を流して留玖を抱きしめて、


「それで、留玖。円士郎とは互いに思いを通わせる恋仲と聞きましたが、まことですか?」


と、尋ねた。


留玖は真っ青になって俺を見上げて、途方に暮れた様子でうつむいた。


「心配しなくて良いのです」

母上はそんな留玖に優しい言葉をかけて、

「晴蔵殿も私も、もしもまことであれば、二人の仲を咎めるつもりはありません」

「えっ……」

留玖は驚いたように大きな目を見開いて、母上を見つめて、


「本当です」


蚊の鳴くような声で言った。