恋口の切りかた

「海野家は永代の家老家。家格としては、御三家の娘を妻として娶るのに釣り合いのとれぬ家柄では決してありません。

加えて、今の当主清十郎殿は元は隣国の主家である氷坂の四男。
正妻として迎えたいとの申し出である以上、はねつけるにはそれなりの理由がいります」


母上の言うことはもっともで──

つまり、向こうもそれと承知の上でこんな話を持ちかけてきたということだろう。


「晴蔵殿がご不在の時に……困りましたねえ……」


母上は溜息を吐いて、それからわなわなと震えている俺を眺めた。


「晴蔵殿との例の約束がありますが──円士郎殿、その……そなたと留玖は今、どうなっているのです?」

「留玖とは──」


俺は、ぐっと両手を握った。


「──恋仲です」


言い切った俺に、母上は何やら疑いの眼差しを向けた。


「それは……円士郎殿が、勝手に思いこんでいるというだけではないのですか?」

「な──ち、違う! 俺と留玖はお互いに思い合う仲になったんだ!」

「本当でしょうかねえ?」


思わず普段通りの口調に戻って叫んだ俺をジロジロと見つめて、

人払いされた部屋の中で母上は、「よもや」と息を呑んだ。


「嫌がる留玖を無理矢理に手籠めになどしたのでは──」

「してねえよッ」


俺は涙目になった。

母上の俺への信用と評価は、相変わらずこんなんかよ……。