恋口の切りかた

「留玖を──海野清十郎が嫁としてもらい受けたいだと!?」


届けられた書状を握りつぶして、俺は激昂した。


「あの野郎──ふざッけんな!」

わめきながら自分の部屋を飛び出すと、部屋の前には留玖がいて
今の俺の声を聞いたのか、今にも泣き出しそうな目で俺を見上げた。

「や……やだよ、私」

留玖は細い指で俺の部屋着の袖をきゅっと握った。

「え……エン。私のこと、お嫁になんてやらないで」

いじらしいその態度に俺はくらくらして、留玖を抱きしめた。

「安心しろ、留玖。絶対にあんな奴にお前を渡したりしねえからな」

「うん……」

腕の中で留玖が俺の背に手を伸ばして、必死な様子でしがみついてきて──


廊下で人目があるかもしれないという思いが脳裏をよぎったものの、

俺は少女の白い頬に手を添えて、柔らかい唇をそっと吸った。


幸い周囲には、廊下にも雪の積もった庭にも、人影は俺たちの他にはなかった。


唇を離して、
彼女の紅潮した頬をなで、
艶やかな黒髪をなで、
背中をなでて、


「母上とも話してくる。お前は何も心配せずに自分の部屋に戻ってろ」


耳元で優しくそう囁いて身を離すと、留玖はそれでもまだ不安そうにしながら部屋へと引き上げていって──


「しかしこのような正式の縁談、理由もなく無下(むげ)に断るわけにも参りません」

座敷で俺と向かい合って座って、母上は困った顔をした。