恋口の切りかた

「まあ、国のことは御家老に任せるしかないが」

帯刀は大きく息を吐いて首を振った。

「俺たちが気にすべきなのは闇鴉の一味のほうだ。

貴様の話では、鎖鎌の兵衛も一味と関係がある者なんだろうが。
兵衛に続いて国崩しの断蔵と、一味に関係のある殺し屋が二人も城下に潜り込んでいるとは……」

「そうだったぜ。隼人も気をつけとけよ。あの女、かなり使うぞ」

俺は狐目の剣客に忠告して、

「あの女の人、薙刀使いです」

と、留玖も言った。

俺はあの河原に駆けつけた時、確かに断蔵が担いでいた長柄の獲物を思い出した。

薙刀使いの殺し屋か──。

「うげっ、俺の獲物との相性はよくねえな」

小太刀の使い手の隼人は顔をしかめた。


薙刀という武器は槍と同様に間合いが長く、武芸のたしなみとして女が修めることも多いが──

言い換えるならば、普通の女が振るっても十分な威力が得られる強力な武器を、殺しの道具として達人級まで修めた相手ということになるのだ。

それは──脅威だ。


「気をつけろって言われてもよ、俺はその女の顔も知らねーし」

「ん〜? 薊か彼岸花みてえな印象の美女だ。会えばすぐわかる」

俺が言うと、ふうん、とうなって隼人は畳に視線を落とした。

「あ、そう言えば……」

留玖がはっとしたように声を上げた。

「忘れてた! エン、おひさちゃんのことなんだけど」

「おひさ? って消えた女中の?」

「うん」

留玖は頷いて、そして気になる話を口にした。

「この場で言うべきかわからないけど……おひさちゃん、清十郎と知り合いみたいだった」