恋口の切りかた

「あ、やっぱり知ってるか」

俺は元盗賊の男の反応を眺め、それから視線を隼人に向ける。

「隼人んちに出入りしてたっつう富山の薬売り、結城家の屋敷にも来たけどよ、あの女──盗賊の引き込み役どころか殺し屋だったぞ」

「なにィ!?」

隼人が固まって、俺は真野断蔵と名乗った女について与一から聞かされた話や、清十郎と手を組んでいるらしいと留玖が聞いたことなどを告げた。

「その名は俺も聞いたことがある。まさか女とはな……」

帯刀が顔をしかめて、

「その女が『仕事』をした国が、全部改易の憂き目に遭ってるってのは本当なのか?」

「俺が知る限りでは本当だ」

半信半疑で尋ねた俺の問いに対して、元町方与力の男はそう答えた。


「逆だ」

ボソッと口にしたのは青文だった。

「逆?」

「俺の考えが正しければ──国崩しの断蔵が関わった国が滅んでいるんじゃない。
『確実に滅びそうな国』にだけ、関わりを持つ殺し屋が断蔵なんだ」

「え?」

「それってつまり──」

俺たちは思わず声を上げて、


「つまり、この国は『近いうちに確実に滅びる』と断蔵に目をつけられた──と、そういうことだな」


深刻な顔で青文はそう言った。