恋口の切りかた

「なんでそこで赤くなってうつむくんだ!?」

騒ぐ円士郎の横で、私は最後に清十郎が残した優しい口づけを思い出した。

あのとき──


なんであの人、あんな目をしたのかな……?


わからなくて、心が騒いだ。

無理矢理に唇を奪われて、嫌なことをされそうになった時には何も感じなかったのに。


「畜生……あの野郎……!」

円士郎は何やら涙目になった。

「俺にも他人に言えないようなことをさせろ!」

「なっ……何言ってるのよう!」

私は真っ赤になりながら自分の体を抱きしめて、円士郎を睨んだ。

エンのヘンタイ!

「え……エンこそ、あの女の人と何やってたの……っ?」

「……知りたい?」

「ふえ?」

「だったら今晩、ゆーっくり教えてやるからよ」

円士郎は意地の悪い表情を浮かべた。

「その代わり、お前にも清十郎に何されたか教えてもらうぞ」

私は泣きそうになった。


ど……どうしてそうなるのよう……。

エンのばか! ヘンタイ!



もう一度心の中でそう叫んで、




数日後、

私たちの知らない海野清十郎についての情報を持ってきたのは、蟄居中のはずの青文だった。