恋口の切りかた

私は円士郎に、海野清十郎に連れられてあのお店に行ったことを話して、

あの女の人と清十郎が知り合いのようだったと伝えた。


「国崩しと手を組んだ? そう言ったのか?」


円士郎は驚いた様子で、

私も、殿様の家から家老家に養子に来たような人が殺し屋と繋がりを持っているなんて、どういうことなのだろうと思って、何だか凄く嫌な予感がした。


虹庵のところに行って、円士郎の頭の怪我を診てもらって、

さすがにどうしたのかと虹庵も訝った。

私は自分のせいだと言おうとしたのだけれど、

「町でちょっとヤクザと喧嘩した」

と円士郎はとぼけて、私を庇ってくれた。


幸い、出血の割りに大した怪我ではないと虹庵は言って、円士郎の手当をしてくれて、

二人で屋敷に戻りながら、私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


しょんぼり歩いていると、

「それで、気になってたんだが留玖、お前さ……」

円士郎は私をチラチラと見下ろして、やがて意を決した様子で、

「清十郎に何された?」

と、尋ねてきた。

「あの野郎、途中でやめたとか言ってやがったが……」

私は思わず自分の唇と胸を押さえた。

何されたって──そんなこと……

「口に出して言えないようなことをされたのかよッ!?」

「えっ? ええと、それは……」

「おい……!」

否定できないでいたら、私の様子を見た円士郎は青くなった。