恋口の切りかた

「減点よ」

言って、

何のためらいもなく、女の人は薙刀をはね上げた。


雪が舞った。


清十郎が身を反らせながら後ろに下がって、間一髪で避ける。


そこに、続けて首を狙ったもう一振りが繰り出され、美青年は更に大きく後ろに飛び退いた。


清十郎との距離が開いて、
金縛りのように動けなかった体がようやく動きを取り戻し、私は慌てて腰の刀に手をかけた。


薙刀という武器は、武家の女性が武芸の嗜みとして修めたりもするものだけれど──

女の人の動作は「嗜み」などという次元を遙かに凌駕していた。

明らかに達人と呼べる域の動きだ。


この人、薙刀使い……?


二撃をかわされた女の人は、
まるで私のそばから清十郎を追い払うのが目的だったかのように、それ以上は清十郎にも私にも刃を向けず、担ぐように薙刀の柄を肩に乗せる。

しかし、

今の攻撃はどちらとも手加減というものが感じられず、明らかに首を飛ばすつもりの動きに見えた。


「……俺を殺してどうするんだ?」

清十郎が憮然とした様子で顔をしかめて、私も緊張しながら女の人を見つめた。

清十郎の言うとおり、
もしも彼がかわせなければ、確実に死んでいた。


この綺麗な女の人は──人間の首を、何の躊躇もなく切り落とそうとしたのだ。



殺し屋──。



それどころではなくて聞き流していたけれど、
さっきの店で円士郎と霧夜の会話に上ったその単語を思い出した。