恋口の切りかた

エン……

私は心の中で大好きな人の名を呼び続けた。

寒いよ。
助けて、エン……


食い入るように私を見つめていた清十郎が、乱れた私の着物を元通りにした。

「悪かったな」

続けて清十郎が謝ってきて、
その声は打って変わって優しくて、私は少し驚いた。

「お前は『俺たち』と同じ側にいる人間だと思ったのにな」

清十郎が私の頬に手をあてがって──次の瞬間、


ぎくりとした。


これまで氷のようだとしか感じなかったのに、優しい、温もりに満ちた柔らかい感覚が私の唇を包み込んでいた。


それはまるで、円士郎がしてくれるような甘い口づけで──


唇が離れて彼の顔を見上げると、清十郎は

どこか寂しそうな
少しつらそうな

そんな目で私を見下ろしていた。