与一はともかく──なんだって留玖がこんな場所に……!?


俺は混乱しながら、大急ぎで身支度を整えて──


「あーあー、あんなに全速力で走って……かわいそうに」


窓辺に座った霧夜が表を見下ろしてそう言って、俺は罪悪感で押し潰されそうになった。


「ったく、感謝してもらいたいね。
俺が先に踏み込んでなかったら、それこそド修羅場になってたんじゃねえのかい」


侠客が視線を戻して、あきれ返った様子でこちらを眺めた。


「しっかしあの断蔵と寝て命があるたァな」

「キッチリ殺されかけたよ!」

俺は怒鳴って、

「はァ?」

侠客の上げた声を背に聞きながら、無我夢中で少女を追って茶屋を飛び出した。


くそ、なんでだよ──!


留玖──留玖──


その名を痛む胸の中で呼びながら彼女の姿を探して走って、

脳裏には少女が残した悲しい笑顔が焼きついて離れなかった。