恋口の切りかた


 【剣】

ふらふらと師走の町を目的もなく一人で歩き回りながら、私はぼんやりと円士郎のことを考えていた。


胸をえぐられるようなおひさの言葉を聞いた時は、死んでしまいたいと思うほどどん底に突き落とされたのに、

すぐに円士郎はそんな私の心も引っ張り上げて、溶かしてくれて──


思い出しただけで恥ずかしさで体中が火照るようなあの夜以来、離れている時もいつでも円士郎のことを思うようになってしまった。

屋敷にいると、常に円士郎の姿を目で探してしまって、

道場でも、木刀を振るう円士郎が格好良くて、ずっと見ていたくて、

円士郎が役目で役宅に行っている間は、寂しくて、寂しくて、彼に会いたくて……


初めは毎晩一緒に寝るなんてどうしようと思ったのに、

気がついたら私、早く夜にならないか、どきどきしながら心待ちにしてる……。


こんなこと、はしたなくて恥ずかしいけれど、

円士郎にもっとさわってほしくて、
円士郎にもっと抱きしめられたくて、

彼の温もりにずっと触れていたかった。


彼の手や唇が触れるだけで、

そこから小さな雷が走るみたいで、
心臓が壊れそうになって、
幸せで、
好きっていう気持ちがどんどん溢れてきて……


もっとそばにいたくなる。

片時も離れたくないと思ってしまう。

同じ屋敷の中にいると、円士郎のそばに行きたいと騒ぐ心を抑えられなくなる。


エン……

私、おかしくなっちゃったのかな。