恋口の切りかた

だが──


顔を横に向けて突きをかわしながら、刀を素手で真横に打ち払い、

俺はこの女武芸者の両手首をつかんで、美しい顔の横の布団の上に押さえつけた。


腕力ではこちらが上だ。

女の手から刀が離れる。


「悪いな。こういう体勢の女を相手にするのは慣れてるんでね」

柔らかな腹にまたがって、
俺はニヤリとしながら女を見下ろした。


「おや、寝技じゃあ不利だったようねェ」

俺に組み伏せられたまま、女が微笑した。

「加点よ、坊や。強い男は好きだわ」

「俺も強い女は好きだぜ?」

腕の力を緩めずに言って、俺は目つきを鋭くした。

「てめェ、何者だ? 闇鴉の一味とどういう関係がある? 月乃って言ったな。本名か?」

「減点。質問の多い男は嫌いよ」

この状況でも余裕を崩さない女の態度に、俺はにやついた。

「本気で気に入ったぜ。
だが、ここは素直に喋っとけよ。それとも力ずくで聞き出されたいか?」

「悪くないわねェ」

女の体から力が抜けた。

俺は少し驚いて目を丸くした。

「さっきの続きで聞き出せるか試してみたらどう?」

こちらを見上げる切れ長の目の中には、ゆらゆらと男を誘う火が揺れている。

「床(とこ)の『上』での勝負は不利だったようだけれど、この私を我慢できなくして、喋らせることができるか──床の『中』で勝負してみる?」

読めない女だな。

くっくっく……と笑いがこみ上げて、俺は体を揺らした。

「いいね。そうさせてもらおうか」

俺は手首を握っていた手を離して細い指に絡め──

横たわった女の体の上に体重をかけて、唇を合わせた。