恋口の切りかた

うふふ。


布団に手を突いて半身を起こした俺に向かって、

帯のほどけた着物をまとわりつかせて仰向けになったまま、魅惑的な稜線をさらけ出して女が笑う。


「結城の円士郎様は随分と腕の立つ使い手だと聞いたけれど」


するすると、寝込んだまま女が頭上に両手を掲げた。

それは一見、男を誘う刺激的な仕草にも見えたが──


「この体勢と位置になったのはまずかったわね」


はっと、女の目的に気づいて俺が手を伸ばそうとした時には、

白魚のようなたおやかな手が、
枕元に置いてあった俺の刀を握って鞘から抜き放っていた。


仰向けのままで。


「さあて、もっと私を感じさせてちょうだいな、坊や」


真っ赤な生き物のような舌が、唇をなめて、


ビュッと、ぎらつく刃がためらいなく俺の首を狙った。

──やはり仰向けのまま。


この体勢からの動きとは思えない、両手を使った勢いのある瞬速の横薙ぎ。

食らえば喉から血がふき出すどころか首が飛ぶ。


しかし俺は、命を消そうとするその刃には頓着せず、刀を振るう女の腕にこちらの腕を絡める。

刀の動きが止まる。


と見るや、しなやかな白い腕は蛇のようにうねって俺のいましめをほどき、目を狙った突きに転じた一撃を加えてきた。


明らかに、武術を修めている者の動きだ。