恋口の切りかた

茶屋の二階の座敷に用意された布団の上に女を組み敷いて、白い肌に口をつけて──


本当にいい女だ。


吸い付くような柔肌にくらりと眩暈を覚えた。

実際、女の髪や体からは香を焚きしめたような──くらくらと理性を溶かしてゆく香りがした。

どこか高貴な──

「いい匂いだな。沈香──」

もっと官能的で刺激的な──

「──いや、麝香(じゃこう)を使ってんのか?」

「あら、加点ね」

俺の下で女が甘い吐息で囁いて、白い指を俺の胸に這わせた。
ぞくりと快感が走る。

「さすが、遊び歩いているという噂でも、上流階級の坊やねェ。
当たり。伽羅(きゃら)と麝香を合わせた香ですよ、若様」

「あんたみたいないい女にはぴったりの香りだな」

うふふ、と妖しく笑う女の唇を吸って、


しばし甘い香りに溺れるように、白い果実を上気させることに没頭して──


八咫烏は、ねえな……。


楽しみながらも俺は、ここへ女を連れ込んだ目的は忘れていなかった。