恋口の切りかた

「減点ね」

「なに?」

「そういう甘い表情よりも、結城の若様は刃物みたいなカブいた目のほうが魅力的ですよ」

俺はニヤリとする。

「俺を知ってんだな」

「そりゃァね。この国では有名な御仁ですもんねェ、結城のエンシロウサマ」

名を呼ばれただけで背筋がぞくぞくするような声だった。

「へェ、気に入ったぜ」

女の顎に手をかけて、魔性めいた笑みを浮かべる白い顔のほっそりした縁を指でなぞった。

「あんた、名前は?」

「月乃と申します」

「つきの、か」

俺は女の名を繰り返して、

「それで、お求めは?」

月乃と名乗った女が言った。

眉を寄せた俺を見て、女は可笑しそうに笑い声を立てて、

「いやですよ。私は薬売りですよ、円士郎様。
胃痛、腹痛をたちどころに鎮める万代常閑が霊薬、かの反魂丹ももちろんございますよ」

「あァ、薬ね。だったら──そうだな」

漆黒の着物に包まれた女の体を眺めて、

「とっておきの媚薬でももらおうかな」

俺は彼女自身を指さした。