恋口の切りかた

凛とした黒無地の着物に、
化粧のせいか元々色白なのか、雪か陶器で作られたような白い肌、
意志の強そうな切れ上がった目尻、
熟れて濡れた真っ赤な唇。


年の頃は完全に不明。

二十歳前後のようにも、三十路を超えているようにも見える。


江戸吉原の花魁もかくやという美女だ。


無彩色の装いの中にあってなお、極彩色の艶(あで)やかな印象をまとっている。



薊(あざみ)か彼岸花のような、女だった。



奉公人が騒ぐワケだ。


こんな女は、俺もりつ殿くらいしか見たことがない。

女装した与一なら、張り合えるかもしれねェな。


親父殿が好きそうな、匂い立つような女の色香を放ついい女である。

ま、その親父殿の血を引く俺にとっても、まさに好みの女だったりするわけだが。


「あら、若様が会いたいって聞いてどんな男かと思ったら、名家の坊やにしてはいい男ねェ」

庭に降りた俺の姿を認めた女の赤い唇が吊り上がり、へつらいもせずに艶のある美声を放った。

声も、いい女だな。


自然と俺の口元も吊り上がる。


「知らなかったな。富山の薬売りってのは、こんな美女ばかりなのか?」


女を口説き落とす時に使う微笑みを作りながら歩み寄ると、

クスッと女が挑発的な笑いを漏らした。