恋口の切りかた

でも、ただ留玖を男として手に入れても意味がない。

欲しいのは彼女の幸せな笑顔だ。

彼女を俺の手で幸せにしてやることが、変わらない俺の本当の望みだ。


そう言い聞かせて、己を必死に制御した。



藤岡のところに、近隣の村の決起の証拠となる血判状を持って行き、

「これであんたらのケツは拭いてやったぜ。心おきなく税を上げられて良かったな」

たっぷりの嫌味と一緒に村人の命を引き渡して、ほっほという狸ジジイの笑い声と国内の平穏とを持ち帰って、



海野清十郎が何かを仕掛けてくる気配もなく十一月も終わり、暦が師走に変わって──俺はその女と出会った。


「最近うちの屋敷に、見かけない凄ェ美人の薬売りが出入りしてる?」

奉公人の男たちが騒いでいるのを聞いて、俺の脳裏には真っ先に隼人の話が浮かんだ。

凄い美人の薬売り。

秋山家の屋敷に出入りしているという富山の薬売りと同一人物と見て、まず間違いなさそうだ。


奉公人たちに、今度姿を見せたら庭に通して俺に教えろと命じておいて、


「来ました! 例の女です」


数日のうちに、そう言って俺の部屋に中間が報せを持ってきた。



まずはどんな美人なのかと興味津々で見に行って、

「へェ」

まるで、真夏の影法師が起き上がったかのように庭先にすっくと立った女を見て、声を上げた。