恋口の切りかた


 【剣】

屋敷に戻ったら、母上が迎えてくれて、涙を流して喜んでくれるのを見て、

私は自害なんて馬鹿な真似をしようとしたと、もう一度反省した。


円士郎や、母上や、私のことを大切に思ってくれる人たちの温もりが心にしみて、もう二度とあんな馬鹿な真似はしないと心に決めた。

なのに──


「馬鹿な真似した罰だ。お仕置きとして、ここで寝てもらうからな」


円士郎がそんなことを言い出して、


どうやっても部屋に戻してもらえなくて、


私は首を縦に振ってしまって──


行灯の火を消す円士郎をぼうっと見つめて、
円士郎に触れられて火のように熱い体と、壊れそうな音を立てている心臓とを抱えて、途方に暮れた。

どうしよう。

前に円士郎と一緒に眠った時も緊張したけれど、

もう私はいっぱいいっぱいで、こんなにどきどきしてるのに、
こんなの、これから毎晩だなんて、心臓が壊れちゃうよ……。


座ったまま円士郎を目で追いかけていたら、火が消えて、外の薄明かりに照らされた優しい暗闇の中で、円士郎の姿が視界から消えて、

「留玖」


後ろから抱き締められて、心臓が跳ね上がった。


「エン……寝るんだよね……」

「おう、寝る」


うそつき。

寝るだけなら、なんでこんなことするの……っ?


「留玖……俺はお前のそばにいるから──」

耳元で、円士郎の声が囁いた。

「だから、いなくなるなよ……俺のそばから、いなくなったりしないでくれ──」