恋口の切りかた

「い、嫌じゃないよ……」

腕の中で留玖がふるふると首を振った。

「だったら、ここにいろよ」

俺は彼女の肩に顔を埋めた。
留玖の甘くていい香りがする。

「俺は、怖ェんだよ」

「エ、エン……?」

「天照の時も含めて、これで二度目だぞ!」

肩口から細い首筋に顔を動かして、そっと鼻先で首を撫でると、留玖がビクンと小さく体を反らせた。

「お前を失ったらって思うと、気が変になりそうだ……!」

「エン……」

弱々しく悲鳴のように俺の名を漏らした留玖の首筋に口づけて、


それから俺は顔を離して、留玖の瞳を覗き込んだ。

「ここにいろ」

繰り返して、
顎に手をかけて、柔らかな唇を親指でそっとなぞった。

「……はい、エン……」

唇が動いて、震える吐息のような囁きが隙間から放たれて、

紅潮した頬でコクンと彼女が頷いた。


「よし」

俺は笑って、行灯の火を吹き消して──


障子から差し込む沈みかけた半月の光の中で、放心したように床(とこ)のそばに座ったまま俺を見つめている留玖を振り返って、

留玖のことを大切にしようと誓ったばかりだが、何もしない……のは、ちょっと難しいかもしれねえなと思った。