恋口の切りかた

「なあに、エン?」

俺の部屋を訪れた寝間着姿の留玖は、畳の上にちょこんと座って、行灯の明かりに照らされた床(とこ)と俺とに視線を送って、落ち着かなそうにそわそわして、

「お前、これから毎晩、しばらくはここで寝ろ」

俺の命令を聞いて硬直した。

「えっ……ええっ? ……な、なんでっ?」

耳まで真っ赤になって、おろおろと困ったように視線を泳がせる留玖が愛しくて、俺は彼女を抱き寄せた。

「あんな真似したお前を、一人にしておくなんてできるワケねえだろうが」

「も、もうあんなことしない……! 絶対に、しないよ……!」

俺に抱きすくめられたまま、留玖は焦った声を出して、

「いーや、駄目だ」

俺は赤く染まった耳元で意地悪く言ってやった。

「馬鹿な真似した罰だ。お仕置きとして、ここで寝てもらうからな」

「で、でも……他の人に見つかったら……」

「見つからねーよ。
俺もお前も、朝稽古でこの屋敷の中じゃ、一番早く起きるだろうが」

「だ、だけど、誰かがもしも私の部屋を覗いたら……」

「しばらくお前の布団、顔見せないように気をつけろって言って霊子に貸してやれ。あいつも喜ぶだろ」

「……で、でも、でもさ……」

「でもじゃねえ!」

もごもごと反論しようとする留玖を、俺はぴしゃりとはねつけて、


「何もしねえよ」


白い頬に優しく触れながら言った。


「それとも、嫌か? やっぱり怖いか……?」