恋口の切りかた

「エン……!?」

留玖が焦った声を上げた。

「傷が開いちゃうよ」

「平気だって」

俺は構わずにそのまま、置き去りにしっぱなしで待ちくたびれていそうな馬のところへ向かって歩き出して、

留玖が、俺の首に腕を絡ませてきゅっと抱きついてきた。


俺は背中に回した手に力を込めて、彼女の肩を強く抱いた。


留玖が可愛い。

気が狂いそうなほどに、愛おしい──。



留玖に羽織をかけてやって、
馬の前に乗せて、
後ろから抱き締めるようにして、

さすがに左手は傷が開きそうだったので、俺は右手だけで手綱を握って、二人で馬の背に揺られて城下へと引き返した。

柔らかい留玖の髪が頬をくすぐって、

留玖と兄妹になったばかりの頃、速駆けの勝負を繰り返していた時には、
こうして彼女を前に乗せて二人で馬に乗る日が来るとは思ってもみなかったな、と思った。

初めて厩に連れて行ったら、

「お馬さんだ! お馬さんがいる!」

留玖はそう言って大はしゃぎしてたっけなァ。


昔のことを懐かしく思い出していたら、文句を言うように馬が短くいなないて、

「あ、お前はいつもと違って重いかァ? 急がせてねえんだから、我慢しろよ」

俺がそう言うと、留玖がようやく、くすくすと笑ってくれた。

「ごめんね、もうちょっとだからね」

留玖の優しい声を聞いて、馬が返事をするようにフヒンと鳴いた。