恋口の切りかた

「俺は、国の政治だの何だのって、自分とは関係ねえ遠い世界のことだと考えてたけど──」

円士郎が口にした内容は、私も昼間考えていたことだったので、びっくりした。

「そうじゃねえって、お前の姿見て知った。
城の中の奴らがやってる役目だってよ、きっとこのまま家督を継いでたら、俺はただの仕事だとしか思わなかった。
お前みたいに泣いたり悲しんだりする奴がいるってことは、見えねえままだったよ」

「わ……私も、同じことを知ったよ。
青文様が失脚して、こんな風に村の人の命が関係してくるなんて、思わなかった」

円士郎は「そうか」と私を見つめて微笑んで、

「なあ、留玖。お前はさ、農民の子なんかに生まれてこなければ良かったって言ったけどよ……俺は、お前がこの村に生まれて、こうして俺と出会ってくれたのにはやっぱり意味があると思うぜ」

そんなことを言って、円士郎の両手が私の頬を包み込んで、顔を上に向けて、

彼の顔が近づいて、優しく唇が重なって、


「ずっと俺のそばにいろよ、留玖」


円士郎はどきどきするような声で、そう囁いてくれたけれど──





──円士郎様が死にかけたのは、みぃ~んなあんたのせい。





冷たい氷のようなおひさの言葉が蘇って、私の心臓から温かいどきどきを消し去った。


「留玖……?」


私はうつむいて、円士郎から一歩離れた。

私には彼のそばにいる資格なんてないんだ、と思った。