恋口の切りかた

江戸にいる親父殿に書状で知らせて、親父殿が殿様に藤岡たちの勝手な行動を伝えたとしても──留守中のことは国の家老たちに一任されている。

江戸と国とで書状を使ってやりとりしているうちに、結局は反乱が起きることになる。


だからこれが──こいつらがやろうとしている百姓一揆を防ぐために俺に今できる唯一の方法だった。


「死ぬ覚悟があるのはわかるけどよ、お前らが死んで、悲しむ者もいるんだろ。反乱なんて起こすのはやめろ」


俺は静かに繰り返して、


「そういうことなら」


と、座敷の奥の年輩の男が頷き、この場の者から一斉に安堵の息が漏れた。


「だが、てめえらが決起しようとしてこうして集まって相談してたのは事実だよな」

俺が言うと、再び村人たちの顔が恐怖に固まった。

「この村の蜂起のことは黙っててやる。その代わり、取引しろ」

自分の胸から嫌な心音が響いているのを聞きながら、俺は冷徹に言った。

「蜂起に荷担しようとした他の村の者の名を全て教えろ。それで、この村の者は見逃してやる」

「仲間を売れって言うのか!」

村人たちが叫んで、

「自分たちの身が可愛ければな」

俺は感情を押し殺して冷淡に告げて、涙に濡れた綺麗な目を大きく見開いて俺を見上げている留玖を一瞥した。

「てめえらには、我が身可愛さに仲間を見殺しにするのなんて、何も今回が初めてじゃあねえだろ」

本当にこれは自分の言葉なのだろうかと思って、嫌な汗が背中を落ちていった。


俺と座敷の奥の男とを固唾を呑んで見比べるその場の者たちの前で、

年輩の男が俺に向かってゆっくりと頷いて言った。

「それで、手を打とう」