恋口の切りかた

ぎりっと、円士郎が鳴らした奥歯の音が聞こえた。


「それでもこいつは、こうしててめえらのために駆けつけたんじゃねェかよ!

自分たちで村を追い出しておいて、こんな時にだけ頼るなんて、虫が良すぎなんだよ!
それで恩知らず呼ばわりだと!?

六年前のあの日、てめえらのうち一人でも刀丸に手を差し伸べた奴がいたのか!!」


村人たちが気まずそうに目を伏せた。

父も、兄も。


「やめて……エン」


私は、握りしめられている円士郎の拳にそっと触れた。

温かい涙が、ほっぺたを流れ落ちた。


「やめて……もういいの」


村人たちの沈黙から、捨てられたどうしようもない現実をまざまざと再認識して、
つらくて、
悲しくて、
寂しくて、

私のためにこうして本気で怒ってくれる円士郎を見て
嬉しくて、
幸せで、

切ないほどにこの人が大好きだと思って、


涙が止まらなかった。