恋口の切りかた

「エン……?」

「留玖。探したぞ、ばか」

円士郎は優しい声でそう言って、私のそばまで歩み寄って肩に手を置いた。

「あ……あんたは……?」

この場に現れた円士郎は珍しく袴に二本差しという格好で、
正装でこそなかったものの、雪輪に浮線剣山桜という独特の結城家の家紋が入った黒い羽織を着ていた。

どう見ても立派なお侍様の姿を見て、肝を潰した様子で尋ねた村人に、

「俺は結城円士郎だ!」

円士郎が名乗って、庄屋様の屋敷の中にざわめきが広がった。

「結城の若様……?」

「あの鬼の子か?」

囁き交わす村人たちを、円士郎は燃えさかる烈火のような目で睨みつけた。


「てめえらが刀丸を捨てたんだろうがッ!」


私が初めて聞くような、怒りの滲んだ声だった。


「六年前、彼女が盗賊を討ち取ってくれたおかけで命拾いしたのに、そんな彼女にてめえらがした仕打ちを忘れたとは言わせねえぞ!!」


しん、と静寂に支配されたその場に、円士郎の声だけが響いた。


「恩知らずはどっちだ!? ぬくぬくと生きてるだと!?

血の繋がった家族に捨てられて、彼女がどれだけ傷ついたのか、
この六年間、どんな思いで生きてきたか──

──てめえらにわかるのかッ!」