恋口の切りかた

「結城家は確かに、寄会組に名を連ねる家の一つですがの、今の円士郎殿は家督を継ぐ前のご身分。
国策に口を出すこのような真似は、ただの盗賊改め方のお役目を逸脱しておるのではないですかの? ようく身の程をわきまえられよ」

藤岡はそう言って、

「つまりご質問の件について私からは何もお話することはないということで、これで失礼するといたしますかな」

などという言葉と共に席を立とうとした。


──は。

成る程、青文の言ったとおりかよ。


面白ェ……!

自然と笑みが浮かんだ。


「お待ちを!」

俺は立ち去ろうとする藤岡を呼び止めた。

「御家老は何か勘違いをなさっておいでのご様子ですね」

唇を吊り上げて言ってやると、ほう? と言って藤岡が動きを止め、振り返った。

「勘違いとな?」

「ええ。私は国や民を憂えて政策に文句を言うためにここへ参ったのではありません」

俺はにっこり微笑んで、
それから、かしこまっていた足を解いて胡座をかき、片膝を立てて座った。

「国も民も若輩者の俺には遠い世界の話でね。
最初にも言ったハズだぜ? 俺がここに来たのは──」

膝に頬杖をついて、俺は藤岡を睨み据えた。

「この愚策にどういう意図があるのか、単に若輩者のこの俺にもわかるように教えてもらいてえと思ったからだよ、狸ジジイ」