恋口の切りかた

「お前、なんで……?」

ぼう然とする私を見下ろして、妹は自分の着物の襟をぎゅっと握った。

「ねえちゃん、昔かくれんぼした時も、よくここに隠れてたの思い出して……」

妹は怖ず怖ずとそう言って、

「ごめんな、ねえちゃん。
おかあたちは、今でもねえちゃんのこと、怖がってるから……。
正直、おれも……やっぱり、そんな格好して刀を持ってるねえちゃんは怖い」

ズキン、と胸が痛んだ。

「はち合わせたら、絶対ああなるって思った。
ねえちゃんもきっと嫌な思いするだろうから、早く町に帰ったほうがいいと思ったのに──」

「そっか……怖がらせて、ごめんね」

私は無理矢理微笑んで、
ずっと座り込んでいたせいですっかり痺れてしまった足で、よろよろと立ち上がって

妹が慌てて後ろに下がるのを見て、やっぱり悲しくなった。


どうして私、こんな格好してるんだろ……。


武家の社会の中にあってもなお、異様なものに違いない自分の姿を見下ろして、唇を噛んだ。


どうして私、こんなことになっちゃったんだろうなぁ──


つうっと一筋、何かが瞳から流れ落ちていって、ごしごしと袖で目を擦った。


「ねえちゃん……」

妹はしばらく私を見つめて、

「ねえちゃん、おれ……もうすぐお嫁に行くの」

と、言った。

「他のねえちゃんたちも、もうみんな嫁いで行ったよ」

「そう……」

衝撃を受けながら、でもそんな年なんだと思って私は頷いた。

「幸せになってね」

私が言うと、妹は初めて嬉しそうな笑顔を見せた。

「うん、ありがとう」

少し恥ずかしそうにうつむいて、

「ねえちゃんは?」

妹はそう尋ねてきた。

「誰か、御武家様の中に……いいひといるの?」