恋口の切りかた

年老いた母はがたがた震えていた。

地面に手を突いて私を見上げる目は、恐怖に歪んでいた。



甘い期待などしていたわけではなかった。

でも、

もしも──母親が私を捨てたことを悔やんでくれていて、私を憐れんで謝ってくれたら──

救われるような気がした。

母の声を聞いた瞬間、どこかでそんな望みを抱いてしまった。


しかし母が私に向けてくる目は、六年前に見たのと何も変わらない──怯えた目だった。
忌まわしいものを見るかのような目だった。

謝罪の言葉は、私を憐れんだものではなく、恐れたものだった。



ああ──



涙も出ない。
こみあげた温かな水は一瞬で乾いてしまった。



思い知った。

ここにはもう、私の居場所などないのだ、
幼い頃の温もりはすべて幻になってしまって、ここはもう冷たいだけの場所なのだ──と。