恋口の切りかた

「忍者みてェな名前(*)の奴だな。なんで──『国崩し』って呼ばれてるんだ?」

「こいつはね、別に闇鴉とばかり手を組んで仕事をしてる殺し屋じゃあないが──関わった国が皆、その名のとおり崩壊してるんだよ」

「なに? どういうこった?」

「どうもこうもないさね。断蔵が仕事をした国は、嘘か真か偶然か──全部お家取り潰しになって滅んじまってるって話なのさ。それでついた名が国崩しの断蔵」


なんだそりゃあ!?


そんなことがあるのかと俺は訝って──偶然かただの噂だろうと片づけた。


まさかその国崩しの断蔵とやらが、既に俺たちの前に現れていたとは思いもしなかった。



(*忍者みたいな名前:円士郎はダンゾウと聞いて、戦国期に「飛び加藤」と呼ばれた幻術使いの忍者、加藤段蔵を連想したらしい)