恋口の切りかた

散々辛辣な内容を語っておいて、最後に持ち上げるのかよ。

「なんつうか……アナタとは口喧嘩したくねえっスね」

隼人が冷や汗を浮かべてぎこちない笑顔を作った。

青文は溜息を吐いて、何も言えずにいる俺を眺めた。

「なァにが民だ、エラそうに。
晴蔵様が寺子屋に通わせてたんだろうが。近隣の村で反乱が起きると聞いたんなら、幼友達の顔が磔刑台の上に並ぶ心配をするところじゃねェのかい」

「ふん。悪かったな」

俺はようやく口を開いて言い返した。

「俺は近隣の村でも町でも嫌われてて、残念ながら幼友達なんて呼べる奴は留玖くらいしかいねーんだよ。

留玖を捨てたあの村の連中が、餓死しようが反乱起こして磔になろうが知ったことか!」

「ほら見ろ。それが本心なんじゃねェかい」

金髪の下で整った顔が苦笑して、

「まァ今はそれでいいから、藤岡殿と会ってきてくれ」

と言った。

「青文、あんたはどうする気だ?」

「俺は海野清十郎について調べる」

尋ねた俺に、彼はそう答えた。

俺はニヤリとする。

「何だよ、やっぱり黙って引っ込んでられねえって気が変わったか?」

「俺には初めから黙って引っ込んでいるつもりなどない」

青文はしゃあしゃあと言った。

「だからこそ、あの場では素顔をさらさなかった。
言っただろう? 正しい心で悪を糾弾するつもりならば、甘んじて受けるってな」

「つまりそうじゃないと考えているワケか?」

と、黙って俺たちのやり取りを聞いていた帯刀が口をはさんだ。

「まずはその可能性を見極めるってトコだな」

青文は難しい顔で考えこむようにしながら、

「いくつか気にかかることがある……」と、呟いた。