恋口の切りかた

友達になってくれたと思ったのに。

笑顔の裏でおひさが私のことをそんな風に見ていたなんて、全然知らなくて……悲しかった。

「そんな理由で、エンを殺そうとしたなんて……許せない!
私、おひさちゃんのこと許さないから……!」

「あんたがあたしのことを許さない?」

おひさが顔から笑いを消して、私が思わず怯むような目でこちらを睨みつけた。

「笑わせないでよ! あんたがあたしに対してそんなこと言う資格なんてないのよっ!」

おひさは声を張り上げて、

何事かと好奇の目を向けてきた通りの人々に気づいて、ぺろっと舌を出して再び笑顔を作った。

「どうする気? ここであたしを捕まえて円士郎様たちに突き出すのかな?」

「そ……そうする……!」

私はいつものように袴に二本差し姿だった。

腰の刀に手をかける私を見て、おひさはふっふ~ん、と余裕の表情のまま笑った。

「へえ、いいの? こんなところであたしなんかに構ってて」

「どういう意味……?」

「あんた、結城家にいるのに何にも教えてもらってないの?
それとも、百姓の出なのに何のキョーミもないってこと?」

何のことかわからないでいると、おひさは私に軽蔑の視線を注いで、

「御家老様たちが国内の税率を引き上げたのよ。
今年は近隣の村はみんな大凶作。あんたの村も、年貢を納める時期でしょ? このまま冬は越えられずに、餓死者が出るんじゃないかしら」

「えっ……」

私は青くなった。

「な……何言ってるの? あの村は……結城家の知行地だもん」

「本当に、なあんにも知らないのね、お嬢サマ。
あんたの村はね、結城家の知行地とこの国の蔵入地の混在村なのよ。つまり半分はこの国の領地ってこと」