「疑いを晴らせぬ以上、そのような得体の知れぬ者に執政を預けるわけにはゆきません。

この上は、殿が江戸よりお戻りになられるまで、ご自宅に蟄居(ちっきょ)されるが宜しいかと思いますが……皆様、いかがですかな?」

清十郎は、あくまで評定役の他の家老や中老、菊田たちに意見を求める言い方をして、


そんな長期に渡って蟄居だと!?

これを受け入れることは、そのまま──


「異論ない」

「ふむ、真偽のほどは殿が江戸から戻られてより後、殿の御前でじっくり詮議いたすことにしよう」


戦慄する俺の前で、藤岡や菊田はしれっと清十郎に賛同した。


「皆様も同じご意見、ということですかな」

青文はその場にいる面々を見回して嘆息し、

「ならば従いましょう」

と言った。



それは、



この瞬間、

二十歳で城代家老になってから五年間に渡って執政の座にいた伊羽青文という男が失脚したことを示していた。