恋口の切りかた

うーん、漣太郎は優しいから、

あれもおれを元気づけようとしてくれたのかな。


あ! おれじゃなかった──「私」だ。



……へんなの。





あのあと、漣太郎は

「だいたい、みんな自分のこと『おれ』って言うし、農民の言葉ってのは男なのか女なのかわかりづらいんだよ」

などと文句を言っていた。


「まあ、母上が張り切ってたから言葉づかいも教え込まれると思うけど──」

「うん。レンちゃ──じゃなかった兄上」


そんな風にうなずくと漣太郎は苦笑して、


「ま、オレの前ではベツに『レンちゃん』で構わねェよ。

オレも普段はこんな言葉づかいだし──でもちゃんとした話し方もしようと思えばできるんだぜ?」


そう言ってくれた。