恋口の切りかた

 
 【剣】

びっくりした。



確かに見知らぬ家で心細かったのは事実だけど、

家族を失って、甘えることのできる相手がいなくなって──


──漣太郎に泣きついてしまった。


まあ、兄になったんだから
甘えてもいい相手なのかもしれないけど、

でも、

そもそも村にいた時だって、そんなに親や兄姉に甘えることもなかったのに。



漣太郎が急に優しい声をかけるものだから、

ずっと気を張っていたのに心がくじけた。



頭をなでられていると、
ひさしぶりに、家族と一緒だったころのほかほかした気持ちに包まれて

少し幸せで



なのに





うう、レンちゃんの変態!





やっぱり抱きついたりするんじゃなかった、と後悔した。



本当に嫌われていないとわかって、安心もしたけれど。