恋口の切りかた

今までグダグダ考えていたのが急にアホくさく思えた。


「ばかやろう」


俺は泣いている留玖の頭をポンと軽く叩いた。



「お前なァ、このオレを誰だと思ってんだ!」



涙にぬれた頬で、きょとんと首をかしげる彼女に

俺は不敵に笑って見せる。



「女に負けたからお前を嫌いになるとかなァ、

この結城漣太郎様は、そんな小せェ人間じゃねえよ」



それから、

いまだに道場の床にくずれ落ちたままの平司に向かってどなる。


「オウコラ、平司!!

てめェも武士の子なら、

いつまでもウジウジしてんじゃねえ!


女だろうが何だろうが、留玖は強ェんだよ!

昨日聞いたろ!
親父だって認めてンだ!

人を斬った経験もある!

負けても仕方ねーだろ!
くやしけりゃ自分で稽古するか、留玖からも学べ」


俺は留玖に向き直り、「心配すんな」といつかも言った言葉をくり返して、

続けた。


「女でもおまえは強い。

オレはおまえに負けても恥だとは思わねえし、
勝ったことは誇りに思ってるぜ?

だからもう、男に生まれてりゃ良かったとか
そんなくだらねェこと考えんな」