促されるままに部屋の中に入ったら、

すっかり彼が回復して床(とこ)の片づけられた部屋の中で、円士郎に抱き寄せられた。

「エ……エン?」

突然抱きすくめられて、心臓が破裂すれるんじゃないかと思うほど激しく鳴って、

「心配すんなよ」

耳元で、円士郎が囁いた。

「風佳のこと、今は仕方ねーけど、俺が当主になったら全部まとめて何とかしてやるからよ」

「あ……」

抱え込んでいたものをそんな風に言い当てられて、

「だからそんな悲しそうな顔すんなよ、留玖」

「うん」

私は涙が溢れてきた両目をぎゅっと瞑って、円士郎の胸に押し当てた。

「いつかまた、風佳と話せる日が来るよね?」

「おう。俺が当主になって何とかしてやる。約束する」

私は円士郎の胸に顔を埋めたまま、微笑んで





だが、


この時の約束が叶えられる日は──

彼が結城家の当主となる日は──


この先、永遠に来ないのだ。