恋口の切りかた

「親父」

円士郎が手元から顔を上げて父上を見上げた。

虹庵がくすくすと笑った。

「私はこのことをすぐに教えようとしたのだがね、晴蔵様がその必要はないと仰ってね」


ええ!? なんで!?

あんなに円士郎は苦しんでたのに──


私は理不尽な父上の行動が理解できずに憤ったのだけれど、


「貴様があまりに情けなかったのでな、円士郎。せっかくの状況を使わん手はなかろうと思ってな」

父上はそんな意地悪なことを言って、


ふん、と円士郎は鼻を鳴らした。

「おかげで色々と目が覚めた」

「己の運命を静かに受け止めることができれば、まあ意味はあったか」

父上は笑って、

「養生いたせ」

と言い残して、立ち去ろうとした。

「待ってくれ、親父」

その背中を、円士郎は呼び止めて

「すまねえ……こんなことになっちまって……」

床の上に手を突いて謝った。