恋口の切りかた

「つうか先生、どうして今まで教えてくれなかったんだよ」

円士郎が顔をしかめて

「いや、私は昨日にでも教えようとしたのだがね──」

何事か言いかける虹庵を遮って、私は叫んだ。

「じゃあ! じゃあ! エンの腕はちゃんと動くようになるんですか!?」

「ああ」

虹庵は事も無げに頷いた。




良かった……エン──




私は嬉しさで涙がこみ上げるのを感じながら、円士郎の顔を見て、

「何だよ、大騒ぎした俺は阿呆だな」

もっと喜ぶと思ったら、
円士郎は床の上にあぐらをかいて、意外にも落ち着き払った様子で言って苦笑した。

「──運が良かったってところか」

そう言って両手を見下ろし、静かに口の端で笑う円士郎は、これまでとちょっと違って見えて

何だか大人びた格好良さが備わっていて──



私は思わず見とれてしまって



「ほう。少しはマシな顔つきになったようだな、円士郎」


かかった声に振り向くと、

開いた障子の向こうの廊下に父上が立って、こちらを見ていた。