恋口の切りかた

「痛ェ痛ェ──っててててて、肩が外れる外れる!」

部屋からは円士郎のそんな声がして、何だろうと中を見ると、

虹庵と、それから見知らぬオジサンがいて、円士郎はオジサンに体を変な方向に捻られて締め上げられていた。

「これ。変な力を入れるから痛いのだ。力を抜きなさい」

オジサンは円士郎に文句を言っていて、

「な──なにやってるんですか!?」

びっくりして尋ねた私には、

「この方は城下で柔術を教えてらっしゃる師範でね、円士郎に正体術(*)を施してもらっているところだ」

虹庵からそんな答えが返ってきた。

「正体術?」

私は目を瞬いた。

虹庵の話では、こうして肉体に正しく力を加えて、骨格や筋肉を整える術なのだそうで……
そう言えばそういう術が柔術の中にあると前に父上から教えていただいた覚えがあった。


「死ぬゥ──やめろォ──」


しばし円士郎のなんだか愉快な悲鳴が響き渡って、


「今日のところはこれで」

オジサンがそう言って円士郎を解放して、床(とこ)の上にグッタリと円士郎が伸びた。



(*正体術:いわゆる整体。柔術では昔こう呼んでいた)