恋口の切りかた

部屋に戻った円士郎はにこにこと笑みを絶やさない虹庵から、全然笑っていない目で説教を食らっていた。

虹庵は明日来た時また同じような真似をしていたらもう知らないと釘を刺して帰って行って、

次の日、私がちょっぴり心配しながら円士郎の部屋を訪れると、
円士郎は床に上半身を起こしていたものの、大人しく室内にいた。

円士郎は何故か髪を下ろしていて、
無頓着に大きくはだけて覗いた胸元に、下ろした総髪がかかっていて

私はまたどきどきして、目のやり場に困ってしまった。


うう、こんなの小さい頃から見慣れているはずなのに。


何だか意識してしまって、まともに円士郎が見れないよ。


ちらちら円士郎を見ながら、

「髪、どうして下ろしてるの?」

私は尋ねて、

「ああ、虹庵先生が昨日、何でか知らねーけど枕を使うなって言っててよ、結って寝るとグチャグチャになるからな」

円士郎はどうでも良さそうに答えて、

それで会話は終わってしまった。


私はもう少し円士郎のそばにいたいと思ったけれど、

ただそばにいるだけでほっぺたが熱くなって



お前は、俺にとって特別な女だ



円士郎に昨日言われた言葉が耳の奥でこだまして、


「留玖……?」

不思議そうな顔をする円士郎に背を向けて、すぐに部屋を飛び出してしまった。



私が再び円士郎の部屋を訪れたのは、

昼過ぎに彼の部屋から変な悲鳴が聞こえてきた時だった。