恋口の切りかた

道場の中で木刀をくくりつけた帯を大急ぎでほどきながら、円士郎はチッと小さく舌打ちした。

「虹庵先生もいいところで入ってくるよなァ」

と彼は私に向かってにやつきながら耳打ちして、

私はまた、何を言えばいいのかわからなくて、真っ赤になってしまった。


それから、円士郎は優しい調子になって、

「悪かったな、留玖。心配させちまって」

と私に謝ってくれた。

「でもお前のおかげで、まあ方法は色々あるってわかったぜ」

円士郎は楽しそうにそんなことを言って、

それは、私に負けて新しい戦法を考え出そうとしている時の円士郎の様子と同じで、
生き生きしていて、


「ねえ、エン……何かあった?」

私は円士郎を見上げて尋ねた。

「ん~? 別に。ただ、隼人や遊水たちのおかげで思い出せただけだ」

「何を?」

「俺が剣術を本気で好きになった理由」

帯をほどき終えて、道場の出口に向かって歩きながらそう言う円士郎は、完全にいつもの調子に戻っていて──


隼人や遊水たちのおかげで……


その言葉に、私の胸はズキンと痛んだ。


私は結局、好きな人のために何もできなかったんだ──