恋口の切りかた

「何をしている!」

道場に凛とした声が響いて、円士郎から飛んで離れた。

「虹庵先生……!?」

入り口には昨日と同じように総髪の蘭方医が立っていた。


どうしよう、今の……見られたのかな。


私はのぼせていた頭から今度は一気に熱が降りていくのを感じて、


「円士郎、君はまた起き上がってこんな場所で木刀など手にして──」


しかし虹庵は怒りの滲んだ声で円士郎に向かってそう言って、

どうやら怒っているのは円士郎が大人しく寝ていなかったのを発見したせいらしかった。


私はちょっとだけホッとして、


「私の言葉が理解できなかったのかね」


そう言いながら道場に入ってくる虹庵の表情は、怒りの滲んだ声とは裏腹ににこやかな笑顔で──

──目だけが全然笑っていなかった。


……コワイよ、先生。


「げえっ!?」

円士郎が、本気で怒っている様子の虹庵を見て一歩後ろに退いて、


「部屋に戻りなさい、円士郎」


「……はい」


静かな微笑で言った虹庵に、円士郎は大人しく頷いた。